日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
高齢者胆嚢結石症の自然経過と Ursodeoxycholic acid 経口投与の有用性について
隈井 知之加藤 直也中山 善秀山本 俊幸星野 信早川 富博宮治 眞武内 俊彦
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1993 年 30 巻 10 号 p. 849-856

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抄録
超音波検査の普及により多数の無症状な胆嚢結石保有者が発見されているが, その取扱いについてはいまだ一定の見解は得られていない. 特に高齢者の場合はその取扱いに際し多数の要因が絡み, 問題は複雑である. 今回われわれは老人医療施設における65歳以上の剖検1,771例 (男性:女性=1:1.2, 平均年齢80.2歳) と3年以上経過観察可能であった無症状胆嚢結石121例 (男性:女性=1:1.9, 平均年齢85.8歳) の胆嚢結石保有者を対象として, その臨床経過から高齢者胆嚢結石症の取扱いを検討した. 併せて Ursodeoxycholic acid (以下UDC) の長期経口投与の有用性についても考察した.
剖検例における結石保有率は16%, 女性に多く, 加齢とともに増加の傾向であった. 結石, 胆嚢癌が直接死因となった例はわずか1.8%であり, 結石の有症状化も3.2%と低率であった. 有症状化による手術施行率は, UDC非投与群で18.9%, UDC投与群では6.4%であった. 胆嚢造影能はUDC投与群で改善例が多くみられ, 胆石溶解効果は非石灰化例では55.9%と良好であった. 以上より高齢者胆嚢結石症では, 有症状化率や胆石自体のまたは癌合併による死因への関与がきわめて低いため, その取扱いの多くは経過観察が妥当である. また, UDCの長期投与は胆石溶解効果の点からばかりでなく, 有症状化の抑制の面からも有用であると考えられる.
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