日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
老年女性痴呆患者における骨・カルシウム代謝異常
羽生 春夫杉山 壮阿部 晋衛小林 康孝前畑 幸彦勝沼 英宇高崎 優
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1993 年 30 巻 10 号 p. 857-863

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抄録
疾呆患者の骨・カルシウム代謝について検討し, 老年期痴呆と骨粗鬆症との関連を明らかにすることを目的とした.
対象は入院中の老年女性でアルツハイマー型痴呆 (DAT) 22例, 脳血管性痴呆 (VD) 23例および痴呆を認めない老年者コントロール (C) 22例である. DEXAにより第2~4腰椎, 両側大腿骨頸部の平均骨密度を測定し, カルシウム代謝関連因子について比較した.
DAT群, VD群ともに腰椎および大腿骨頸部の骨密度はC群に比し有意な低下がみられ, 骨粗鬆症の合併が推測された. カルシウム関連因子として, DAT群では血清カルシウム, 特にカルシウムイオンの低下が認められ, 血清副甲状腺ホルモンの高値, カルシトニンの低値傾向, ビタミンDの低値, 尿中カルシウム排泄量の増加傾向がみられたことから, その成因にはカルシウム代謝異常の関与が示唆された. 一方, VD群では尿中カルシウム排泄量の増加とビタミンDの低値傾向がみられたのみで, その他のカルシウム関連因子には変化が認められなかった. むしろ歩行不能例が有意に多くみられたことから, ADLの低下に伴う不動性骨粗鬆症による可能性が推測された.
老年女性痴呆患者では骨粗鬆症を合併し, このことは転倒などに伴う骨折の危険性の増大につながることから, 治療やケアにおいて考慮すべき問題と思われる.
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