医学検査
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症例報告
HbA1c測定機器の波形エラーから変異ヘモグロビンが疑われた2症例について
見手倉 久治須賀原 亮木村 美咲小林 美紀黄江 泰晴北中 明
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2025 年 74 巻 4 号 p. 758-763

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抄録

HbA1cをHPLC法で測定した場合に出力される異常値メッセージによって変異ヘモグロビンが強く疑われた2例を経験した。2例ともHbA1cを測定した主目的は検査前や受診時のスクリーニング検査であった。当院において,機器による異常値メッセージ発生実績は0.1~0.2%(30~50検体/年,重複例を含む)となっていた。内訳として,そのほとんどが「HbA0異常低値」と「HbF異常高値」が占めており,「#C異常高値」,「重複ピークあり」,「HbA1cテール異常」といった変異ヘモグロビンの存在が否定できない異常値メッセージは1年に3~5回の頻度で発生していた。変異ヘモグロビンは,酸素との親和性に異常を示すものがあり,その結果として溶血性疾患や多血症およびチアノーゼといった疾患を伴う場合がある。しかし,変異ヘモグロビンを保有していても無症状で,血液学的検査所見にも異常を認めない場合がある。測定機器からの異常値メッセージを検出した場合,その原因を確認して,必要に応じて臨床にHbA1c結果への影響とともにグリコアルブミンなど他の血糖コントロール指標となる検査項目の説明を行うことが重要である。外国人労働者の増加や各種イベントによる様々な人種が国内で生活する現代において,変異ヘモグロビンの検出と報告は今以上に必要不可欠な検査になると考える。

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© 2025 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
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