抄録
目的と方法: 老年者の剖検例を用いて胃の腸上皮化生と胃潰瘍の関係を病理学的に検討した. 対象は剖検胃で胃癌, 胃切除例を除き, 顕微鏡的に腸上皮化生の分布形式が判読できた882例 (男446例, 女436例), 平均年齢79.7歳である.
胃の腸上皮化生の分類は, A型 (幽門側型), B型 (両側型), C型 (噴門側型), O型 (小彎型), N型(無型), S型 (特殊型), F型 (局在型) を使用した. 胃潰瘍はUl-II以上の Open Ulcer と Scar について検討した. 終末期の潰瘍は除いた.
結果: 潰瘍はO型, B型と比較的腸上皮化生が高度のものに多かった.
Open Ulcer はO型では腸上皮化生領域を含め全域に見られ, Ul-IIが少なくなかった.
A型, B型では腺境界に, 深達性の潰瘍が多く見られた.
Scar はO型では腸上皮化生領域に多く, A型, B型では腺境界に多く見られた.
O型の Open Ulcer と Scar の周辺粘膜は, scar で腸上皮である症例が多く, また経過年数の長い症例ほど腸上皮であるものが多かった.
高位潰瘍は絶対数はO型に多いが, N型, C型に高頻度に見られた. 噴門側腸上皮化生の境界には Open Ulcer, Scar を合わせて5例見られた.