抄録
左室心筋のうちで心室中隔基部は, 血行力学的ストレスなどの点で心室中隔中央部とは異なった肥厚様式を取る可能性がある. この点を断層心エコーを用いて正常血圧者122例について男女別, 年齢別に検討した. その結果, 心室中隔基部厚 (B) は男女とも加齢とともに増加する傾向があり, 男では49歳以下での平均9.4mmに比べ50歳台, 60歳台, 70歳以上でそれぞれ10.1mm, 10.2mm, 11.4mm (p<0.01) であり, 女では49歳以下の6.8mmに比べ各年代でそれぞれ8.1mm, 8.3mm (以上p<0.05), 10.0mm (p<0.01) であった. 一方心室中隔中央部厚 (M) では男女とも各年齢群間に有意な壁厚変化は見られなかったが, 年齢と壁厚の相関図を見ると女で有意な正相関が見られた. この結果をB/M比で見ると男女とも年齢との相関図で有意な正相関を示し (男; R=0.46, p<0.01, 女; R=0.43, p<0.01), 年齢群別の比較でも49歳以下と比べ70歳以上では男女それぞれ1.08対1.30, 1.01対1.27 (いずれもp<0.01) と有意な増加を示していた. 心室中隔基部の肥厚は高齢者ほど強調されており, この点を検討する上で, B/M比は簡便で優れた指標である.