1995 年 32 巻 6 号 p. 429-437
老年高血圧患者の主観的 Quality of Life (QOL) に影響する背景因子を明らかにする目的で, 多施設共同研究を行った.
対象は高血圧にて外来通院中で, 明らかな心不全や痴呆がない60歳以上の, 男性249例, 女性267例の合計516例である. QOLの中核的構成要因である主観的要因を, 日本人の老年循環器疾患患者用に作成されたQOL評価法を用いて測定した. それと, 家族構成, 仕事, 収入, 社会経済階層, 身体的日常生活動作(ADL)などの社会的要因をはじめとする種々の背景因子との関連を, 年齢や性, 虚血性心疾患と脳卒中の合併の有無や使用薬剤などの医療要因で補正して包括的に検討した.
その結果, 良好なQOL得点を示したのは, 配偶者や子供があり, 主観的生活程度が高く, 主な収入源が給与または自営業収入であり, 現在就業中で, 身体的ADLの障害がない対象者であった.