日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
高齢者RAEB in Tでara-C少量療法 (皮下投与) にて完全寛解を得た1例
綿谷 須賀子周藤 英将酒巻 一平上田 孝典中村 徹和野 雅治
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1995 年 32 巻 6 号 p. 438-441

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抄録

症例は74歳, 男性. 汎血球減少の精査目的で当科受診. 骨髄異形成症候群(MDS; refractory anemia with excess of blast; RAEB) と診断した. 外来に通院 (ubenimex 内服) 中, 血小板減少が著明となり, RAEB in transformation (RAEB-t) と診断した. 高齢者であり, 副作用の少ない cytosine arabinoside (ara-C) 少量療法, 即ち10mg/m2×2回/日, 皮下注を21日間施行した. 入院時24.4%認めた骨髄芽球は, 第37病日6.8%に減少し, 再度同療法で完全寛解を得(骨髄芽球0.6%), 三血球系の改善を認めた. なお治療中, 感染症・出血等の副作用は認めなかった. また, 日常生活動作 (activities of daily living: ADL) 能力の低下及び腎機能の悪化は認めなかった. さらに, 治療前に頻回に必要であった濃厚赤血球輸血及び濃縮血小板血漿輸血は, 治療中1~2回施行しただけであった. 約7カ月後再び汎血球減少を認め再入院したが, 骨髄中骨髄芽球17.8%で急性白血病への移行は認められなかった.
近年, 増加しつつある高齢者の白血病・骨髄異形成症候群 (MDS) の治療法がいまだ確立をみない中で, 本療法は緩徐な抗腫瘍効果を有すが副作用の比較的少ない治療法として試みられている. しかし, 70歳以上の高齢者に対する著効例の報告は比較的少ない. 本症例は74歳と高齢であり, 本療法にて完全寛解に導入し得た貴重な症例と考えられた. なお, 本症例におけるara-C最高血中濃度は, 投与20分後, 一旦128ng/mlに達し, 本療法の作用機序として, 分化誘導よりむしろ緩徐な cytostatic な作用が推測された.

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