日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
骨変化に左右差を認めた多発性硬化症の1例
丸山 博文阪田 千種原田 暁石崎 文子中村 重信
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1995 年 32 巻 6 号 p. 442-445

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抄録

症例は多発性硬化症の63歳女性. 1969年 (38歳) 右視力低下で発症し, 以後視力低下・脱力といった症状で寛解増悪を繰り返した. 1992年8月 (61歳) 左上下肢の脱力と感覚障害, 排尿・排便困難のため入院した. 頚髄MRIでC5-6のレベルに病変を認め, 多発性硬化症の再発と考えた. 直ちにステロイドパルス療法を行い, 以後プレドニゾロン漸減療法を行った. その結果, 筋力は全般に回復したが, 左上肢遠位部の筋力は3/5程度であった. また左上下肢の皮膚温低下, 著明な浮腫, 左肩関節亜脱臼, レーザー・ドップラー血流測定での左上肢の血流低下, 左大腿骨頭壊死を認めた. 1993年1月と9月のmultiple scanninng X-ray photodensitometry 法による手の検討では, 障害側の左手で骨減少が明らかであった. また2回の検査間ではほとんど変化しなかった右手に対して, 左手では著明な骨減少を認めた. 骨変化の進行に明らかな左右差を認めたことより, 骨減少の成因にはステロイドよりも, 多発性硬化症に伴う中枢神経障害に伴う自律神経障害による血流障害などがより強く影響を与えたことが示唆された.

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