日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
肺でのLacZ遺伝子発現によって誤嚥の機序を検討する嚥下性肺炎の動物モデル
寺本 信嗣井藤 英喜松瀬 健松井 弘稔大賀 栄次郎片山 弘文岡 輝明大内 尉義
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1998 年 35 巻 4 号 p. 303-306

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抄録

嚥下性肺炎は老年者に頻度が高く, 死因としても重要であるが, 病態を解析するための動物モデルはあまり検討されていない. 我々は, C57 balck mouse に対して遺伝子導入の評価に用いられるE1遺伝子領域を除いて E. coli LacZ遺伝子を組み込んだ Adenovirus vector (Ad-CMV-LacZ) を麻酔下と無麻酔下に分けて経鼻的に投与し, LacZ遺伝子の発現をX gal 染色によって検討した. その結果, 無麻酔下のマウスに対する Ad vector 経鼻投与では, 投与した鼻腔にはLacZ遺伝子発現を認めたが, 気管, 両肺には, 遺伝子発現は1例もなかった. 一方, 麻酔下に Ad vactor を経鼻投与した群では, 全例で肺にLacZ遺伝子発現がみられ, 半数のマウスで気管にも遺伝子発現がみられた. したがって, 麻酔下のように意識や嚥下反射が障害された状態では, 口腔, 鼻腔内の微生物や口腔内容物を高率に誤嚥する可能性があり, この誤嚥の機序や誤嚥内容物の肺内分布の検討に麻酔下でのAd-CMV-LacZ経鼻投与動物モデルは有用と考えられる.

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