1999 年 36 巻 5 号 p. 323-327
高齢者の貧血を特徴づけている重要な背景になっているものに加齢に伴う造血機能の低下がある. 造血能に関与する要素としては, 造血組織の分布の変化, 造血幹細胞の変化, 造血微小環境の変化等が挙げられる. 今回は, 骨髄の加齢による変化をみる目的で, 骨髄の脂肪組織面積, 有核細胞数, 細胞密度を測定し, 更にこの変化への重要な鍵を握っていると考えられている骨髄主幹動脈の硬化性変化に伴う血管内腔面積の変化を年代別に観測した. その結果, 何れも加齢に伴って有意な変化が認められた. 次に, 高齢者に高頻度にみられる2次性貧血の中で慢性炎症に伴う貧血として知られているACDの症例について, 炎症性サイトカイン (IL-1, IL-6, TNFα), ラクトフェリン及びトランスフェリンレセプターの定量を行った結果について述べた.