高齢者剖検例大動脈には粥状動脈硬化巣の中央部が明瞭に陥凹する動脈硬化性病変 (以下, 陥凹性病変) が存在する. これらのうち非融合性の陥凹性病変のあるものは動脈硬化巣退縮の一形態像であることを明らかにしてきた. この陥凹性病変の中央は類円形に明瞭に陥凹し, その周囲堤との移行は平滑で, 陥凹性病変の表層全体は内皮細胞により被覆されている形態学的特徴を有している. また, 家兎の動脈硬化退縮モデルでも, 高齢者剖検例に認められたと同様の形態を呈する陥凹性病変の再現を認めた. この陥凹性病変の成因を明らかにするために, 家兎大動脈退縮モデルにおける陥凹性病変の構成細胞についてアポトーシスや細胞増殖能を検索し, 陥凹性病変形成の機序との関連について検討した. その結果, 家兎の陥凹性病変におけるアポトーシス発現率は対照群動脈硬化性病変よりも高値であり, 陥凹性病変の中央の陥凹部は陥凹性病変の周堤部よりも高値であった. 対照群動脈硬化性病変にはKi-67陽性細胞発現をみたが, 陥凹性病変ではki-67陽性細胞は認められなかった. 以上により, 家兎退縮モデルにおける大動脈の陥凹性病変の出現はアポトーシスと関連していることが示された.