日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
アルツハイマー型老年痴呆および血管性痴呆の生命予後に関連する要因の検討
老人性痴呆疾患センターでの追跡調査から
植木 昭紀真城 英孝中島 貴也三和 千徳守田 嘉男
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1999 年 36 巻 5 号 p. 358-364

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抄録

兵庫県老人性痴呆疾患センターで平成2年2月から平成5年2月までに鑑別診断を受けた65歳以降発病のアルツハイマー型老年痴呆126名, 脳血管性痴呆129名を対象に平成10年1月に生命予後について調査したところ, 鑑別診断から5年後にはアルツハイマー型老年痴呆62名, 脳血管性痴呆71名が死亡していた. それらの死亡患者について鑑別診断時の精神的, 身体的機能状態を示す指標の中で生命予後に関連する要因を検討した. 5年後の死亡率はアルツハイマー型老年痴呆と脳血管性痴呆の間に有意差はみられなかった. また平均発病年齢, 鑑別診断時の平均年齢にも有意差はみられなかった. しかし脳血管性痴呆はアルツハイマー型老年痴呆に較べて平均死亡年齢が低く, 発病から死亡までの平均期間, 75%生存率を示す発病からの期間が有意に短かった. 死因としてアルツハイマー型老年痴呆では肺炎が最も多く, 老衰, 心疾患の順であった. 脳血管性痴呆では心疾患が最も多く, 肺炎, 脳血管疾患の順であった. アルツハイマー型老年痴呆では痴呆の重症度, 知的機能障害, 大脳皮質萎縮のそれぞれと, 脳血管性痴呆では身体合併症, 運動機能障害, 低蛋白血症のそれぞれと生命予後に関連性を認めた. アルツハイマー型老年痴呆では脳の進行性の変性過程に伴う痴呆の進行が死亡と関わっているのに対して, 脳血管性痴呆では心血管系をはじめとした様々な身体合併症が生命予後に影響を与えている可能性があると考えられた.

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