日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
核上性構音・嚥下障害患者でみられる大脳半球~天幕下梗塞巣の検討
無症候性脳梗塞の関与
山口 喜移小笠原 正彦堤 孝一平田 幸一片山 宗一
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1999 年 36 巻 5 号 p. 353-357

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抄録

無症候性脳梗塞 (SCI: silent cerebral infarction) が核上性の構音障害 (DA)・嚥下障害 (DP) の発症に及ぼす潜在的な影響について解析した報告は少ない. われわれは, SCIの存在が核上性のDA・DPの発症に関与するかどうかについて多発性脳梗塞患者のMRI画像の詳細な分析により検討した. 初回発作で持続性DA+DPを発症した14例 (DA+DP群), 持続性DAのみを呈した9例 (DA群) についてMRIを天幕上・下にわたり検討した. 信号強度変化, 症状出現側から, DA+DP出現誘因病巣が判明し得たのは6例であり, 対側のSCIと病巣間を結んで, 左右皮質枝・線条体・橋病変のうち3カ所関与が4例 (67%) に認められた (DA群: 40%). このうち, SCIの存在が核上性のDA・DPの発症に一次的な影響を及ぼしていると思われる症例が各群各1例認められ, このような症例では, SCIを積極的に治療する必要性があるものと思われた.

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