日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
都市在住高齢者の転倒・転落事故
救急搬送事例の検討
浅川 康吉高橋 龍太郎香川 順
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2001 年 38 巻 4 号 p. 534-539

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抄録

本研究の目的は, 都市在住高齢者の転倒・転落事故のうち, 受傷者が救急搬送された事故について, 発生頻度の推計ならびに発生件数と高齢者人口との関連および事故内容の特徴を検討することである. 調査地域は東京都内の一地域58町で, 調査期間は平成9年9月1日からの一年間とした. 対象は65歳以上の高齢者が受傷者として搬送された居宅での転倒・転落事故517件 (男性136件, 女性381件) とした. 65歳以上人口1,000人の年あたり事故発生頻度は男性では4.13件, 女性では788件となり, 女性は男性の1.9倍高率であった. また, 各町の事故発生件数と65歳以上人口との間には有意な正の相関を認めた (男性r=0.674, 女性r=0.846, p<0.001).
年齢別にみた事故内容の特徴は住居形態にみられ, 男性, 女性とも85歳以上の超高齢者群における一戸建住宅での事故の割合が65歳以上75歳未満の前期高齢者群に比べ有意に高かった (p<0.05). また, ロジスティック回帰分析の結果, 骨折の危険因子となる事故内容として, 受傷部位と住居形態が有意であった (p<0.05). 受傷部位のオッズ比は7.559 (95%信頼区間4.926-11.598), 住居形態のオッズ比は1.660 (95%信頼区間1.067-2.584) であり, 四肢の受傷や一戸建住宅での事故は骨折の危険性を高めることが示唆された. 一戸建住宅における転倒・転落事故の予防策を講じることは, 都市在住高齢者の転倒・転落事故防止において重要であると考えられた. 一戸建住宅では手すりの設置や踏み台の利用などにより転倒のきっかけを減少させるとともに, 衝撃緩和動作がとりやすいように小型の家具を配置するなどの住環境の工夫が必要と思われた.

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