日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
和歌山県における老年者高血圧治療の実態
大森 久司羽野 卓三伊藤 周平西尾 一郎
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2002 年 39 巻 1 号 p. 57-61

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抄録

和歌山県医師会内科医会に所属する医師を対象に, 1997年2月に外来を受診した高血圧患者の治療開始時の血圧, 初診時の高血圧性臓器合併症のための検査, 初回使用降圧薬とその3カ月後の効果について, 実地医家における老年者高血圧治療の実態調査を行った.
7,647症例の回答を得た. 治療開始時の血圧は, 老年者群で収縮期血圧が有意に高く, 拡張期血圧が有意に低かった. 初診時の高血圧性臓器合併症評価の検査は, 心電図 (非老年者群/老年者群; 98.3%/71.3%), 胸部X線 (86.5%/65.2%), 心エコー (27.1%/23.7%), 尿検査 (96.0%/69.3%), 眼底検査 (27.0%/24.3%) のすべてにおいて, 老年者群での施行率が有意に低かった. 一方, 心電図での左室肥大所見, 胸部X線での心胸郭比の拡大, 尿検査での蛋白陽性についての有意所見は老年者群で低かった.
薬物治療開始時の各降圧薬は, カルシウム拮抗薬 (Ca拮抗薬); (47.3%/51.9%), ACE阻害薬 (ACE-I); (14.4%/12.2%), 利尿薬; (6.3%/10.2%), β遮断薬; (11.2%/4.7%), α遮断薬 (1.4%/1.3%) であった. 老年者での使用降圧薬は, 非老年者と同様Ca拮抗薬, ACE-Iが多かった. また, 3カ月後の降圧効果で降圧十分としたものは, (61.5%/68.5%) で老年者で有意に高かった. 降圧不十分な場合は, 薬剤を増量するよりも他剤に変更や他剤を併用が多かった.
老年者における初診時の高血圧性臓器障害の評価のための検査施行率が低く, 潜在的な高血圧性臓器障害を有する患者を評価するための積極的な取り組みが必要と考えられた. 老年者における薬物治療開始時の各降圧薬は, Ca拮抗薬, ACE阻害薬, 利尿薬が多く, 降圧効果が不十分な場合には, 他剤に変更や他剤を併用が多く, 実地医家の治療は, 現行の老年者高血圧ガイドラインとも合致していた.

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