日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
高齢女性におけるアルファカルシドール投与の骨・カルシウム代謝に及ぼす影響
斉藤 真一中塚 喜義三木 隆己中 弘志北谷 香代子西沢 良記森井 浩世
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2002 年 39 巻 1 号 p. 62-68

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抄録

アルファカルシドール (以下1α(OH)D3) はわが国では, 骨粗鬆症に対して処方される頻度の高い薬剤である. その長期経口投与による骨量の改善や骨折出現率の抑制効果がこれまで報告されているが, どのような骨・カルシウム (Ca) 代謝の変化をもたらすかについての詳細は明らかではない. 高齢女性16名, 平均年齢72.6±4.5 (62~81) 歳を対象に1α(OH)D3 1μgを毎朝食後経口投与し, 投与開始前, 開始後1, 4, 12, 24週においてカルシウム (Ca) 代謝に関連した生化学検査, ビタミンD代謝産物, 生物学的骨代謝マーカーを測定し, 骨・Ca代謝の変化について観察し検討した. intact-PTH, ビタミンD代謝産物として, 1α,25(OH)2D, 24,25(OH)2D, 25(OH)Dを測定した. 骨代謝マーカーとして, オステオカルシン (OC), 骨型アルカリフォスファターゼ (BAP), 尿中デオキシピリジノリン (DPD), I型コラーゲンC末端テロペプチド (CTx) 等を測定した. その結果, 骨形成マーカーである血中OC, BAPは, 基礎値からの変化は有意ではないものの, 1週後でいずれも上昇を認めた. 骨吸収マーカーである尿中DPDでは投与維持期の12週, 24週後で有意な低下を認め, CTxは12週後で有意な低下を認めた. 高齢女性においては, 1α(OH)D3の1μg/日の投与により, 長期には副甲状腺機能の抑制により骨吸収は抑制されるが, 初期には骨形成へ直接作用する傾向が確認され, 骨形成を促進するという in vitro で示されている成績を臨床的に裏付けるものと考えられる.

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