日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
地域高齢者の栄養状態と栄養摂取量の加齢に伴う10年間の変化
久山町研究
城田 知子大石 明子篠原 章子内田 和宏清原 裕藤島 正敏
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2002 年 39 巻 1 号 p. 69-74

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抄録

福岡県久山町の在宅高齢者387名 (60歳以上) を1988年から10年間追跡し, 栄養状態および栄養摂取状況の加齢に伴う変化を検討した. 1988年における対象集団の平均年齢は男性65歳, 女性66歳であった. 10年後の1998年では, 男女とも身長, 体重, body mass index の平均値が有意に減少していた. また, 栄養状態を反映する血液ヘモグロビン, 総コレステロール値も有意に減少したが, 血清アルブミン値とHDLコレステロールは逆に有意に増加した. 血清アルブミン値の低下がみられなかったことは, 本研究の対象者は元気に年齢を重ねた高齢者と考えられる.
男女ともに糖質摂取量の減少によってエネルギー摂取量が有意に減少したが, たんぱく質および脂質の摂取量に明らかな変化はなかった. 鉄以外の栄養素の摂取率 (栄養所要量に対する割合) は, 100%を超えた範囲で増減がみられた. 栄養比率 (総エネルギー摂取量に占める割合) の経年変化をみると, たんぱく質エネルギー比と脂質エネルギー比の増加, 糖質エネルギー比の減少がみられた.
以上より, 地域住民中の比較的元気な高齢者では, 加齢に伴い糖質摂取量は減少したがたんぱく質および脂質摂取量に変化はなかった. 脂質を相対的に多めに摂取することは血清脂質の維持に寄与していると考えられた.

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