日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
大学病院老年科病棟における入院時総合機能評価と退院先との関係の検討
梅垣 宏行野村 秀樹中村 了安藤 富士子下方 浩史山本 さやか葛谷 雅文井口 昭久
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2002 年 39 巻 1 号 p. 75-82

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抄録

在宅高齢者では, 病院への入院を契機に介護施設へ移行することもまれではない. 今回我々は, 在宅から名古屋大学医学部附属病院老年科病棟に入院した65歳以上の患者に対し高齢者総合機能評価を施行し, 退院先と各評価スケールとの関連を検討した. 退院先が自宅であった自宅群と, 老人保健施設, 療養病床などの施設に移った施設群に分けて, 入院時の基本的日常動作 (Barthel index), 手段的日常動作 (Lowton scale), 認知機能 (Mini Mental State Examination) を比較すると, 各スケールのスコアは施設群において有意に低かった. 抑うつのスケールである Geriatric Depression Scale-15では, 2群間に統計学的に有意な差を認めなかったが, 両群とも抑うつ度が高く, 施設群においてより抑うつ度が高かった. また, 自宅群と施設群とでのカイ2乗検定による単変量解析では, Barthel index では食事の項目以外のすべての項目, Lowton scale では, 洗濯以外のすべての項目が退院先と有意に関連していた. Mini Mental State Examination では, 場所の見当識, 計算, 図形描画の項目が有意であった. 年齢, 性別, GDSスケールの得点は退院先と有意な関連がなかった. 社会生活の項目では, コミュニケーションと集団行動の項目が有意であった. さらに, 単変量解析で有意であった項目を用いて行った多重ロジスティック解析では, ADL, 特に排泄の自立度とコミュニケーション能力が退院先と関連が強いことが示唆された.

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