日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
変形性膝関節症骨構造の空間周波数解析パワースペクトルを用いた定量化
宮村 季浩飯島 純夫山縣 然太朗
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2002 年 39 巻 1 号 p. 83-87

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抄録

目的 変形性膝関節症の骨構造を単純X線画像を用いて定量化することを目的に, 空間周波数解析パワースペクトルの指向性に注目した新たな指標を求めた. その有用性を検討する目的で変形性膝関節症のX線分類との関係を, 空間周波数解析パワースペクトルの1次モーメントおよびフラクタル次元と比較検討を行った. 方法 34歳から85歳の女性41名の右膝の単純X線画像を用いFFT (fast Fourier transform) によりパワースペクトルを求め, そこから骨構造の指向性を示す新たな指標であるDI (directivity index) 値を得た. 変形性膝関節症のX線分類との相関を空間周波数解析パワースペクトルの1次モーメントおよびフラクタル次元と比較した. 結果 DIと変形性膝関節症のX線分類との間には有意な関係が認められたが, 1次モーメントおよびフラクタル次元との間に有意な関係は認められなかった. また膝関節の変形の有無を従属変数, 年齢, ΣGS/D, DIを独立変数としたロジスティック回帰分析を行い, DI値のみが膝関節の変形の有無との間に有意な関係を認めた. 結論 DI値は軟骨下骨梁の網目構造が変形により傾きパワースペクトルの指向性が失われることに注目した指標である. そのため骨梁の網目構造の緻密さを示す指標である1次モーメントやフラクタル次元と比べ, わずかな軟骨下骨梁の変化を客観的にとらえることができるものと考える. DI値が変形性膝関節症の状態を定量化するための指標となれば, 予防のために重要な疫学調査に用いることにより変形性膝関節症による高齢者のADL低下防止に大きく貢献するものとなる.

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