日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
急性心筋梗塞を発症しステント留置した高齢者特発性血小板減少性紫斑病の1例
菊池 清香林 豊藤岡 精二茎田 仁志越智 直登
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2002 年 39 巻 1 号 p. 88-93

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抄録

特発性血小板減少性紫斑病 (以下ITP) に急性心筋梗塞を合併し, 経皮的冠動脈形成術 (以下PTCA) を施行しステントを留置したが重篤な出血症状を来すことなく順調に経過した一例を経験した. 症例は68歳女性. 1998年12月にITPと診断された. 1999年2月6日に急性心筋梗塞を発症し入院. 入院時の血小板数は22,000/μlと低値であったがあきらかな出血傾向は認めなかった. 発症後約10時間に緊急冠動脈造影を開始し, seg. 4PD: 75%狭窄, seg. 7: 完全閉塞, seg. 9: 50~75%狭窄, seg. 10: 75%狭窄, seg. 13: 完全閉塞という結果であった. 心電図, 心エコーの結果とあわせて seg. 7が今回の心筋梗塞の責任血管と考え, seg. 7に対して direct PTCAを施行した. 冠動脈解離を併発したため同部位に対しステントを留置し終了した. 終了後の穿刺部の止血は良好であり, その後もヘパリンの持続点滴, 塩酸チクロピジンの内服で抗凝固療法を行ったが出血症状を認めることもなく経過した. 一般的に血小板減少はPTCAの相対的禁忌であるが, 症状, 状態を見ながら適応を決定し慎重に抗凝固療法ならびに抗血小板療法を行うことによって安全に施行することが可能であると考えられた.

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