日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
在宅虚弱高齢者におけるベッドから車椅子への移乗による循環動態の変化について
萩原 章子金川 克子
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2002 年 39 巻 3 号 p. 296-302

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抄録
起居移動能力に障害をもつ在宅虚弱高齢者22名 (平均年齢79.7±7.6歳), および健常高齢者11名 (平均年齢79.8±6.9歳) を対象に, 日常行っているベッドから車椅子への移乗による循環動態の変化を測定し, 介助の有無など移乗方法による特徴を調べた. 全介助で移乗した対象を全介助群 (N=11), 部分介助または自力で移乗した対象を非全介助群 (N=11), 健常高齢者を対照群とした. 対照群では, 移乗直前に比べ移乗15分後の拡張期血圧は有意に上昇し (p<0.05), 対象個々の推移から移乗15分後の平均血圧はやや高値で落ち着く傾向が見られた. 一方全介助群では, 移乗による有意な血圧変化は認められず, 移乗により平均血圧が低下し続けた対象も3名みられた. 非全介助群では, 移乗直後に全ての血圧指標が有意に上昇し (p<0.05), 3名の対象ではWHOによる高血圧の診断基準 (収縮期血圧>160mmHgまたは拡張期血圧>95mmHg) に達した. 各群の変化を比較すると, 移乗直前から移乗15分後の平均血圧の変化値に有意差が認められ (p<0.05), 全介助群は非全介助群に比べ有意に低値となった (p<0.05). 移乗による心拍変動の変化については, 非全介助群, 対照群では移乗後LF/HFが有意に上昇したが, 全介助群では有意差は認められなかった. 移乗後LF/HFが上昇し, HF/TOが低下するという定型的反応を示した対象は, 全介助群では4名 (44.4%) と半数以下であった. しかし, 心拍変動の変化は血圧変化と一致しない点もあり, データ精度についての問題が考えられた. 以上の結果から, 起居移動能力に障害をもつ在宅虚弱高齢者では, 移乗方法によって移乗による血圧変化に差異があることが考えられた. また血圧, 心拍変動の変化から, 全介助群での循環器系反応性の低下, 非全介助群での移乗による負荷の大きさが推察された.
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