抄録
物忘れ早期発見のネットワークにおける大学病院としての主要な役割は, 物忘れ検診による痴呆疑い例について痴呆の有無と痴呆の原因疾患を明らかにし, 治療方針を決定するために必要な情報と共に患者を紹介元へ還元することにある. 同時にこのシステムは検診のみならず, 痴呆疾患における病診連携の構築にも貢献している. 本報告では, 私たちが日常診療で行っている痴呆をきたす疾患の診断手順, すなわち変性・血管障害・感染性疾患・代謝障害・その他の多くの疾患の中から当該疾患を系統的にスクリーニングしてゆく手順を紹介した. さらに痴呆の有無・程度・性質などの評価法の実際とその注意点について述べ, ネットワークをもとに紹介・受診し, 痴呆の原因が明らかになった症例を呈示しながら, 各痴呆疾患の臨床的・画像的特徴の概要を紹介した. 最後に大学病院の立場からみたネットワークの問題点についてふれ, 今後の進展のための糧としたい.