日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
介護保険制度導入4年目における福岡県遠賀地区の要介護高齢者を介護する家族の介護負担感
大浦 麻絵鷲尾 昌一和泉 比佐子森 満
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2005 年 42 巻 4 号 p. 411-416

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抄録

本研究は, 2003年10月に福岡県遠賀郡のM町の唯一の訪問看護ステーションの利用者 (要介護高齢者とその家族介護者) 44名中, 有効回答を得られた40人を対象に, 日本語版 Zarit 介護負担尺度 (J-ZBI) を用いて, 介護負担に関する調査を行った. J-ZBIの得点を3分位に分け得点の高い順に高負担群, 中負担群, 低負担群, と定義した. また, 本調査までのJ-ZBI, CES-D, 抑うつの割合, 寝たきりの割合, 痴呆の割合やサービスの利用を, 介護保険導入前と経時的に比較検討した.
高負担群は中負担群, 低負担群に比べてJ-ZBI, CES-Dが高かった. 高負担群は低負担群に比べて健康状態の悪いと答えた者, 経済的ゆとりの無い者の割合が高く, 介護時間が長かった. 高負担群は中負担群に比べてショートステイの利用が多かった.
介護保険導入前と導入後の調査を経時的に比較検討した結果, 導入前と比べJ-ZBIは3年目には低下する傾向を認め, 4年目には有意に低下した. 統計学的有意差は認めなかったものの, 抑うつの割合は導入前の56.3%から4年目の37.5%に低下した. 寝たきりの割合は4年目に有意に低下した. デイケア・デイサービスの利用者の割合は3年目, 4年目には有意に低下していた. 介護保険導入により4年目にはJ-ZBIは有意に低下し, 介護者の抑うつの割合も低下傾向を示したが, 一般人の抑うつの割合と比べるとはるかに高く, 介護者に対する支援をもっと行う必要があると考えられた.

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