日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
もの忘れ外来通院中のアルツハイマー型痴呆症患者における行動・心理学的症候と認知機能障害, 介護負担感の関連について
武地 一山田 裕子杉原 百合子北 徹
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2006 年 43 巻 2 号 p. 207-216

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抄録

目的: もの忘れ外来通院中のアルツハイマー型痴呆症 (AD) 患者における行動・心理学的症候 (BPSD) として捉えられる周辺症状と中核症状である認知機能障害, および介護負担感との関連を明らかにする. 方法: もの忘れ外来通院中の46組のAD患者・家族介護者を対象とした. BPSDの調査には Cummings らにより開発された Neuropsychiatry Inventory (NPI) を用い, Teri らの研究を参考に下位領域として記憶に関する症候を加えた. 認知機能の評価にはMMSE, word fluency, 時計描画テスト等を, 介護負担感の測定には Zarit 介護負担尺度および抑うつ尺度CES-Dを用いた. 結果: BPSDとして記憶に関する症候, 無為, うつ, 妄想, 興奮, 不安が多く見られ, 特に記憶と無為に関しては幅広い症状が高頻度に見られた. BPSDは介護負担感に強い影響を与えており, 中でも不安, 興奮, 異常行動が介護負担感に強い相関を示すことが明らかとなった. MMSE以外の認知機能得点の低下およびADL低下も Zarit 介護負担尺度と有意な相関を示したが, 多変量解析ではNPIのみが有意に関連していた. 一方, 介護者の抑うつ度は患者の近時記憶低下と関連が深い可能性が示唆された. BPSDと認知機能との関連では妄想, 無為がMMSEの低下と関連すること等, 認知機能の低下とBPSD悪化に関連が示されたが, 質問項目ごとの詳細な検討により記憶, うつに関する症候についてはむしろ認知機能が高い患者に多い項目もあることが示された. 結論: もの忘れ外来通院中のAD患者のBPSDや認知機能障害の詳細な項目まで検討することにより, 介護家族負担感や抑うつとの間や患者要因相互の間に様々な関係があることが明らかになった. このような関係を把握することにより, 効果的な病態評価と援助が行えるものと思われる.

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