日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
2型糖尿病患者における cardio-ankle vascular index と動脈硬化進展度との関係におよぼす年齢の影響
若林 一郎増田 浩史
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キーワード: 動脈硬化, 2型糖尿病, 加齢, 血圧
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2006 年 43 巻 2 号 p. 217-221

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抄録

目的: 脈波速度を用いた動脈壁の硬化度 (arterial stiffness) の新しい指標として最近 cardio-ankle vascular index (CAVI) が提案され, 血圧と独立した動脈硬化の指標として期待されている. 本研究では糖尿病患者におけるCAVIと動脈硬化の進展度との関係におよぼす年齢の影響について明らかにすることを目的とした. 方法: 中高年の2型糖尿病患者105名 (平均年齢65.1歳) を対象とした. 動脈硬化の進展度の指標としては, 頸動脈エコー法での平均内膜-中膜厚 (IMT, mean intima-media thickness) を用い, CAVIとIMTおよび動脈硬化の主なリスク要因との関係について検討した. 結果: 対象者の55.2%がCAVI異常高値 (≧9.0) を示した. 単回帰分析では, CAVIは年齢, 糖尿病罹患期間およびIMTと有意な相関を示した. 喫煙, 血清総コレステロール, 血圧およびIMTを独立変数として用いた場合のロジスティック回帰分析の無調整分析では, 平均血圧およびIMTにおいてそれぞれの最低3分位に対する最高3分位でのCAVI異常高値へのオッズ比は有意であった. 一方, 性および年齢で調整後のオッズ比は総コレステロールおよび平均血圧で有意だったが, IMTでは有意でなかった. 多変量分析では, CAVIとIMTとの相関は平均血圧の影響を受けなかったが, 年齢の影響を強く受け, 年齢の項目を独立変数に加えた場合にはCAVIとIMTとの間に有意な相関を認めなかった. 一方, ankle-brachial pressure index (ABPI) とIMTとの間には, 年齢, 性, 平均血圧と独立した有意な負の相関を認めた. 結論: CAVIは動脈硬化のリスクを反映するものの, CAVIと動脈硬化の進展度との関係には年齢が強く交絡することから, CAVIを動脈硬化進展度の評価に用いる場合には, 必ず年齢を考慮に入れる必要がある.

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