抄録
アサガホの花色の生成に關する生理遺傳學的研究によれば, Ca, C, R, A等の4補足因子の共存が花冠のアントシアン色素の生成に必要で, 是等因子の中, Ca, C因子はアントシアンの色原體であるフラヴオン (Flavones) 等の生成に關與し, R因子は, A因子の協力を得て色原體からアントシアンを生成する作用に關與する。莖の色の生成は, C因子に關係なく, Ca, R, Aの3因子の共存による。
R因子のactivatorと考へられるA因子は從來の研究によると2重複因子より成りたつてゐる。然しながら, 本論文に述べられた研究によれば, 3個因子より成り立ち, この外に多分2個の重複因子がありと考へられる。
R因子の作用は, 此等重複因子の何れか1因子により發現され, Ca因子の存在に於て, 此等因子の劣性因子a1, a2, a3, a4並にa5因子の各がR因子の劣性因子rと同樣, 緑色莖の白色花に關する。そこで, 花筒の有色と否は兎角として緑色莖白色花の數は表現型的に大體一樣に白色花であるが因子型的にこれを見て多い。
表現型的に同一外觀を呈する2種の白色花間で作られた交雜のF1は何れも有色花でF2に於て, 4種の表現型を分離するが, 其の分離比は必すしも同樣ではない。CaCRaなる因子型の有色筒, 緑色莖の白色花とCacRAなる因子型の有色莖白色花間の交雜のF1は兩親とは全く異なる有色花であり, 其のF2に於ては, 有色花, 有色筒緑色莖の白色花, 有色莖白色花並に, 白色筒緑色莖の白色花の4種の表現型を兩性雜種の分離比9 : 3 : 3 : 1に夫々を分離する。
一方, CaCrAなる因子型の有色筒緑色莖の白色花とCacRAなる因子型の有色莖白色花間の交雜のF1は前述の交雜のF1と同樣, 有色花を示すが, F2に於ては, リンケーヂを示す分離を示す。其のリンケーヂはc, r兩因子間に25.0±1.40%, から38.9±3.01%の變異を示す組換價を有する。
故に, c, r兩因子は黄葉リンデーヂ群に屬し, a1, a2, a3, a4, a5の各因子は, 既報の如く夫々次の各リンケーヂ群に屬す。即ち, 今井氏のw2aに該當すると考へられるa1, 因子は牡丹咲リンケーヂ群に, a2因子は渦性リンケーヂ群に, 又今井氏のw2bに該當すると考へられるa3因子も同リンケーヂ群に屬し, a4因子は斑入葉リンケーヂ群に屬し, a5因子は丸葉リンケーヂ群に屬す。