遺伝学雑誌
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腫瘍ネズミにおける生殖細胞の異常分裂について
加納 恭子
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1953 年 28 巻 2 号 p. 63-68

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抄録
1) 吉田肉腫及びMTK肉腫を移植したネズミにおいては, 動物が死期に近づくとその睾丸はしばしば潜伏性となり, 浸潤組織に囲まれて萎縮する。このような睾丸において生殖細胞の異常分裂が観察されたので, その原因をアゾ色素を与えて発生させた肝癌ネズミのそれと比較することによつて調査した。
2) 観察された異常性は次のとおりである。中期赤道板における染色体の排列異常, 染色体数の異常, 分裂後-末期にみられる不等分裂, 極性の混乱, 染色体移行の遅れや染色体橋の形成, 多核細胞の形成, 多核及び多極分裂, 染色体内部構造の崩壞, 粘着及び凝縮。
3) 異常を生ずる主な原因として, 腫瘍によつて生ずる生理条件の悪化と, 潜伏睾丸による影響とをあげたい。
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