マイマイガ (
Lymantria dispar L.) の性的強種族 (弘前産) と弱種族 (札幌産) の4, 5, 6令幼虫を用いて生殖巣の除去, ならびに移植の実験を行い, 二次性徴に及ばす影響を検討した。その結果は次のように要約される。
1) 手術に先立つて行う幼虫の体毛の除去はその後の変態に影響を及ばさない。
2) 生殖巣の除去は115頭, 去勢を伴わない生殖巣の移植は76頭, 去勢した宿主への生殖巣の移植は96頭の幼虫で夫々行い, 各々26.956%, 75.000%, 26.041%に当る成虫が羽化した (第I, II及びIII表)。
3) 若干個体で手術の機械的刺戟によるのではないかと思われる形態変化があらわれた。しかし性徴の他性への移行変化は全然認められない。
4) 移植された卵巣は新宿主の体内で卵管が発育し, 卵子が形成される。宿主が雌の場合には卵子が薄肉色になり, 精巣を移植された雌では, 卵子の一部に精巣上覆の色素の移行が行われるもののようである。宿主を雄にすればできた卵子は黄色を呈し, その卵子数は正常の雌よりもずつと少い (第IV表)。
5) 去勢されない雄では, 卵巣を移植されても宿主の精子形成は大差なく行われ, 一方卵巣からは黄色の卵子が形成される。
6) 移植された精巣においては, その内容物が退化する傾向がある。
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