抄録
1). 陽性の趨光性をもたないといわれるキイロショウジョウバエの1突然変異型 tan3 系統の Tryptophan 系代謝と趨光性について実験を試みた.
2). tan3 系統は他の野生型に比較して Red, Brown 両色素共淡色である.
3). tan3 系統は Kynurenine, 3-Hydroxykynurenine を添食させることによつて, Brown pigment が増加するとともに趨光性も増大する. しかし Tryptophan 添食によつては Brown pigment は増大しないし, 趨光性も特に増大しないことから, tan3 系統は Tryptophan 代謝径路中 Tryptophan と Kynurenine の中間において異常を生じた vermilion に似た1突然変異系統であろうと推定される.
4). (3) の処理によつて, Brown pigment の増加とともに Co が検出されるようになるが, これは吉川等の報告しているように Co-Fuscanine が形成されたことを意味し, この Co-Fuscanine が特に趨光性と密接に関係を有するものと考えられる.