抄録
シロネズミの腹水腫瘍 MTK-IV における分葉核細胞について調査した. その出現頻度は移植世代や移植一世代間の時期によつて幾分異るが, 20~30% の頻度を示す, 分葉核細胞の分裂および形成過程は分裂終期の新娘核形成期の一時的な特異性を除いてはすべて正常の細胞分裂過程と同様である. 分葉核の形成は新娘核形成時における核質の膨潤に基いて起るもので, 多極性の異常分裂などにもとづく異常とは明らかに異つた現象である. 分葉核細胞の分裂および形成過程, 分裂能力などの結果より, これらの細胞は異常型の細胞ではなく, 分裂過程における一時的な特異現象と考える.