遺伝学雑誌
Online ISSN : 1880-5787
Print ISSN : 0021-504X
ISSN-L : 0021-504X
日本人における体細胞染色体の研究
牧野 佐二郎佐々木 本道
著者情報
ジャーナル フリー

1960 年 35 巻 8 号 p. 228-237

詳細
抄録

2~7月の日本人胎児41個体より得た種種の体組織細胞における染色体を調査した。観察方法は主として (39個体) 組織培養法により, 標本の製作は水処理押つぶし法によった。それに加うるに2~3カ月の胎児6個体において組織培養法によらず, 新鮮な組織の細胞をそのまま水処理押つぶし法により固定染色して観察に供した。描写器により正確に染色体数を算定した433個の細胞のうち428個(98.85%) には46の染色体数が確認された。残りの5個の中1個は47, 4個は92の染色体を有する細胞であった。描写器を使用しないで行なった rough counting の3048個の細胞のうち2997個 (98.33%) は二倍性, 50個は四倍性, 1個は八倍性の細胞であった (Table 1)。
個個の染色体をその形態的特徴, 特に大きさならびに着糸点の位置により, 比較観察して, 染色体型を詳細に分析した (Figs. 3~4, Table 3)。
X染色体は6番目と7番目の常染色体対の中間の大きさであり, submedian の着糸点を有する。しかしながらXの同定はそれに類似した形態をもつ常染色体と混同されやすいのでむしろ困難である。Y染色体は21番目の常染色体対と近似の極めて小形の acrocentric chromosome で, しばしば heteropicnotic な性質により condense した状態で現われる。Yの有無を確認することによって, 外部形態により性別を判定しなかった個体の性別を判別することができる。

著者関連情報
© 日本遺伝学会
前の記事 次の記事
feedback
Top