2018 年 80 巻 2 号 p. 197-218
本研究の目的は,気象変動の影響を受けやすい米農家の収入リスク低減に寄与する金融商品の開発である。米の生産量に影響を与えるとされている気象要素は,気温,降水量,日照時間とされており,それらを組み合わせて規定されるペイオフを持つ天候デリバティブの開発を行った。そのプライシングにおいては,既存の価格評価方法である確率分布適合法とBurning Cost法の2種類を用いた。さらに,開発したデリバティブを導入した場合の米農家の収入リスクの変化を標準偏差とValue at Riskの2指標で測った。その結果,気温と日照時間両方に依存するペイオフを持つ天候デリバティブを導入した場合,導入前や1つの気象変数のみに依存するペイオフを持つ天候デリバティブよりも,両指標において収入リスクを減少させることが示された。