抄録
日本経済は長期的な視野での建て直しが求められる局面に差し掛かっている。ただ、経済政策の具体化にあたっては、前提となる短期、中期、長期の経済予測が異なる目的で異なる省庁によって作成されており、それらの間で相互に整合性が確保されているわけでは必ずしもない。厚生労働省によって作成されたGDPの長期予測では生産性の上昇が楽観的に見積もられている可能性があり、もう1つのGDP決定要因である労働投入についてナイーブな議論を避けずに政策効果を見積もる時期に差し掛かっている。このためにも短期、中期、長期の整合性が確保された経済予測を作成し、経済政策のトータルパッケージを示したうえで、国民的議論を喚起する時期に差し掛かっているのではないだろうか。