AIが組織における経営と労働のありかたに及ぼす影響はますます拡大しており, それに伴ってAIに関するリスクや懸念もより深刻な問題として議論されるようになってきた. しかし, こうした「AI脅威論」の中には, 実態と乖離した誤認にもとづくものも少なくない. この問題意識にもとづき, 本稿はまずAI脅威論の背景にある知能観として「一般知能因子(g因子)説」が影を落としていることを指摘したうえで, ヒトの知能の構造をより的確に示すモデルとして多重知能理論について解説する. 次に, 一般にはヒトの得意分野と認識されているがじつはAIのほうがすぐれた能力を発揮する領域の例として, 「パターン認識」, 「共感」, 「個別対応」, そして「創造性」について検討する. 最後に, 今後ヒトとAIが効果的に協働・共生する社会を実現するために人間が果たすべき役割として, 「監督」, 「プロデューサー」, そして「希望の担い手」という3つの役割を論じる. 特に, 探索可能な範囲の限界(「水平線」)の先にある事象をAIが適切に評価できないという水平線効果によって生じうるさまざまな意思決定リスクに抗するために人間が果たすべき枢要な役割として, 困難な状況下でも「希望」を掲げ続けることの重要性について考察を深める.
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