痛風と核酸代謝
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原著 3
小児急性白血病患者の治療各時期における血清尿酸値の検討
小嶋 千明久保田 優豆本 公余東山 幸恵永井 亜矢子
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2012 年 36 巻 2 号 p. 105-112

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抄録

小児白血病において発症時に高尿酸血症をきたす患者があることは良く知られている.しかし,治療中や治療終了後の血清尿酸値(以下:尿酸値)の変化の検討はほとんど無い.本研究では,京都大学附属病院及び神戸医療センター中央市民病院小児科にて治療を受けた急性リンパ性白血病(ALL)患者を主たる対象として,治療開始前(発症時),治療中,治療終了後の異なる3つの時期における尿酸値の変化につき比較検討した.治療開始前は,67名(男39名,女28名;年齢2カ月~15歳),治療中は,23名(男19名,女4名;年齢1~14歳),治療終了後経過観察中は,他の白血病を含め38名(男21名,女17名;年齢5~19歳)であった.尿酸値の小児基準値(久保田優;痛風と核酸代謝 33:37-40,2009)を基に各年齢の尿酸値のz-scoreを求め,score +2以上を高尿酸血症,score -2以下を低尿酸血症と定義した.発症時の高尿酸血症は23名(34.3%)で,その割合は男児に有意に高かった.種々の因子を用いた多変量解析では,尿酸値z-scoreはクレアチニン値,LDH値および末梢血白血球数と関連が見られた.治療中にはクール毎に,尿酸値は一時的に低下する傾向が見られた.特に,初回寛解導入中,低尿酸血症を10名(43.5%)が経験した.一方,高尿酸血症はわずか1名で,治療終了時には3名(13.0%)であった.治療終了後の経過観察中には,高尿酸血症4名(10.5%),低尿酸血症1名(2.6%)を認めた.今回の研究では対象患者群が治療の3つの時期で異なるため厳密な比較は困難である.しかし,治療の各時期での多彩な尿酸値の変化が明らかになり,今後,そのメカニズムの検討(特に治療法との関連)が課題である.

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© 2012 一般社団法人 日本痛風・核酸代謝学会
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