痛風と核酸代謝
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原著 3
痛風患者の腎CTで観察される腎錐体部のHigh Density Area
清水 徹堀 浩梅山 正登
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2014 年 38 巻 2 号 p. 129-136

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抄録

【背 景】 痛風患者の腎臓を単純ヘリカル CTで検査した時に観察される陽性の所見には,(1)Calculus Density,(2)High Density Area(HDA)の2つがある (1)は腎結石とみなされている.(2)は腎錐体部に観察される正常腎よりややCT値に高い領域で,今までは臨床的な意義も不明であり,単に “high density” と呼ばれていてnormal variantと考えられていた.
【目 的】 痛風患者において単純腎CTで観察されるHDAの意義について検討する.
【方 法】 痛風男性273例の初診時・治療開始前に単純ヘリカルCTを行い,腎錐体部にHDAが認められた群と認められなかった群に分けて,クリアランス検査(1時間法)から得られた腎機能,尿酸動態および関連するパラメータを比較した.
【結果・考察】 HDAは273例中27例(9.9%)に認められた.HDA(+)群の血清クレアチニン値は246例のHDA(-)群より有意に高く(p<0.0001),eGFR,クレアチニン・クリアランスはそれぞれHDA(-)群の値より低く(p<0.0001),HDA(+)群の腎機能は低下していることが判明した.痛風発症年齢,尿pH,血圧,および脂質代謝に関するパラメータには両群間に有意差は認められなかったが,HDA(+)群のHbA1cはHDA(-)群よりも有意に高値を示した(p=0.0177).痛風男性273例中,88例(32%)に腎CTで腎結石が確認された.HDA(+)群の27例中で腎結石が併存していたのは20例 (74%:95%CI 54-89%)であったのに対して,HDA(-)群の246例中では68例(28%:95%CI 22-34%)で,HDA(+)群の腎結石併存率はHDA(-)群よりも有意に高かった(オッズ比7.5:95%CI 3.0-18.5).HDAが認められた1症例を造影したところ,HDAの出現部位は腎錐体部に一致していた.この領域には尿の濃縮や酸性化が行われる集合管や結石が形成されるBellini管が集積している.HDAの本態が解明されれば,gouty nephropathyの機転が明らかになるのではないかと期待される.
【結 論】 痛風患者におけるHDA(+)群の腎機能は明らかに低下しており,HDAは腎機能障害に関連するCT上の異常所見である可能性が高い.

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© 2014 一般社団法人 日本痛風・核酸代謝学会
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