痛風と核酸代謝
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38 巻, 2 号
痛風と核酸代謝
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総説
  • 森崎 裕子, 森崎 隆幸
    2014 年 38 巻 2 号 p. 101-108
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/20
    ジャーナル フリー
    プリン代謝とくにアデニンヌクレオチド代謝は細胞内におけるATPの維持に重要な役割を果たしている.AMPデアミナーゼ(AMPD)は細胞内AMPを減少させることによりATPレベルを維持していると考えられている.ヒトなどではAMPDには3つのアイソフォーム, (AMPD1, AMPD2, AMPD3)が存在し,このうちAMPD1とAMPD3についてはヒトにおける酵素異常症の存在が知られており,AMPD1 筋AMPD欠損症(AMPD1変異)はミオパシーの原因として,赤血球AMPD欠損症(AMPD3変異)では細胞内ATPの増加を生じると報告されている.一方,AMPD2の変異(AMPD2欠損症)はヒトでは報告されていなかったが,最近,AMPD2のホモ欠損はヒトにおいて橋小脳低形成を引き起こすことが明らかになった.マウスモデルでは,AMPD2単独欠損では神経系の変化はないが,AMPD2/AMPD3複合欠損マウスは出生後3週までに行動異常を示してすべて死亡し,海馬・小脳などの神経細胞の変性を認めた.またAMPD2/AMPD3複合欠損マウス脳組織では,細胞内ATPの増加とGTPの減少を認めた.酵母のAMPD変異株はアデニン添加の特殊条件でその増殖が阻害されるが,この変異株はヒトAMPD2発現により増殖能は改善する.AMPD2欠損患者由来線維芽細胞でも,アデノシン添加により生存率が低下した.また,この条件で細胞内ATPの増加とGTPの減少を認め,同時にタンパク質合成能の低下が示された.AMPD2欠損患者由来神経細胞でのアデノシン添加培養後の細胞生存率の低下はAICAR(AICAribonucleotide)の添加により改善し,細胞内GTPの増加とタンパク質合成能の改善が示唆された.以上より,アデニンヌクレオチド代謝の重要酵素のひとつであるAMPDは,細胞内ATPレベルの維持のみならず,アデニンヌクレオチドからグアニンヌクレオチドへの変換を通して細胞内GTPの維持とそれによるタンパク質合成調節にも重要な役割を果たしていることが示された.
原著 1
  • 西川 元, 山口 雄一郎, 大野 岩男, 細谷 龍男, 横尾 隆
    2014 年 38 巻 2 号 p. 109-116
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/20
    ジャーナル フリー
    慢性腎臓病(CKD)患者において,尿酸がどのような腎組織所見と関連しているかについて検討を行った.対象は,当院で腎生検を施行し,尿酸動態のデータが得られたCKD患者143例(男性94例,女性49例)で,平均年齢は45.7 ± 14.8歳,腎機能は血清クレアチニン値1.32 ± 0.97mg/dl,推算GFR(eGFR)59.6 ± 27.5ml/min/1.73m2,クレアチニンクリアランス(Ccr) 83 ± 39ml/minで,血清尿酸値(SUA)は6.8 ± 1.6 mg/dlである.SUAに関連する腎病理組織所見について重回帰分析を行ったところ,SUAは間質線維化・尿細管萎縮度とは強く(t= 3.858, p= 0.0002),細動脈硝子化(t= 2.169, p= 0.0318)とは弱く関連を示したが,糸球体の全節性硬化度,弓状・小葉間動脈壁肥厚とは関連を示さなかった.これらの結果から,CKD患者において高尿酸血症は,腎細動脈病変および尿細管間質病変の両者と密接に関連することが示唆された.
原著 2
  • 西川 元, 市田 公美, 大野 岩男, 細谷 龍男, 横尾 隆
    2014 年 38 巻 2 号 p. 117-128
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/20
    ジャーナル フリー
    19世紀ごろに痛風患者に腎不全が合併することが知られるようになった.それ以降,高尿酸血症が腎機能を悪化させるかどうかは長年にわたって議論されてきた.1990年ごろになると超音波検査によって痛風腎の診断が行われるようになり,正常腎では,腎髄質は腎皮質より低いエコーレベルを呈するが,痛風腎では,逆に腎髄質が皮質よりも高いエコーレベルに描出されることが多く,腎髄質高輝度エコー像(hyperechoic medulla)と呼ばれている.今回われわれは,痛風・高尿酸血症患者のうち,腹部超音波断層検査で痛風腎と診断された症例の臨床的特徴を明らかにすることを目的として,当院通院中の痛風患者で腹部超音波断層検査にて,hyperechoic medullaの所見を有する痛風腎群10例と,所見のない非痛風腎群10例について治療前後の血清尿酸値や腎機能の変化などを観察し,さらに近年痛風発症の原因遺伝子とされるABCG2遺伝子の変異について検討した.非痛風腎群では酸性尿を呈する症例は認めなかったが,痛風腎群では酸性尿を示した症例が10例中9例と有意に酸性尿を示していた.また治療開始5年後では非痛風腎群の腎機能は悪化を認めなかったが,痛風腎群では血清クレアチニン値の上昇および推定糸球体濾過量の低下を有意に認めた.ABCG2遺伝子の変異の頻度については両群間に有意な差は認めなかった.
原著 3
  • 清水 徹, 堀 浩, 梅山 正登
    2014 年 38 巻 2 号 p. 129-136
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/20
    ジャーナル フリー
    【背 景】 痛風患者の腎臓を単純ヘリカル CTで検査した時に観察される陽性の所見には,(1)Calculus Density,(2)High Density Area(HDA)の2つがある (1)は腎結石とみなされている.(2)は腎錐体部に観察される正常腎よりややCT値に高い領域で,今までは臨床的な意義も不明であり,単に “high density” と呼ばれていてnormal variantと考えられていた.
    【目 的】 痛風患者において単純腎CTで観察されるHDAの意義について検討する.
    【方 法】 痛風男性273例の初診時・治療開始前に単純ヘリカルCTを行い,腎錐体部にHDAが認められた群と認められなかった群に分けて,クリアランス検査(1時間法)から得られた腎機能,尿酸動態および関連するパラメータを比較した.
    【結果・考察】 HDAは273例中27例(9.9%)に認められた.HDA(+)群の血清クレアチニン値は246例のHDA(-)群より有意に高く(p<0.0001),eGFR,クレアチニン・クリアランスはそれぞれHDA(-)群の値より低く(p<0.0001),HDA(+)群の腎機能は低下していることが判明した.痛風発症年齢,尿pH,血圧,および脂質代謝に関するパラメータには両群間に有意差は認められなかったが,HDA(+)群のHbA1cはHDA(-)群よりも有意に高値を示した(p=0.0177).痛風男性273例中,88例(32%)に腎CTで腎結石が確認された.HDA(+)群の27例中で腎結石が併存していたのは20例 (74%:95%CI 54-89%)であったのに対して,HDA(-)群の246例中では68例(28%:95%CI 22-34%)で,HDA(+)群の腎結石併存率はHDA(-)群よりも有意に高かった(オッズ比7.5:95%CI 3.0-18.5).HDAが認められた1症例を造影したところ,HDAの出現部位は腎錐体部に一致していた.この領域には尿の濃縮や酸性化が行われる集合管や結石が形成されるBellini管が集積している.HDAの本態が解明されれば,gouty nephropathyの機転が明らかになるのではないかと期待される.
    【結 論】 痛風患者におけるHDA(+)群の腎機能は明らかに低下しており,HDAは腎機能障害に関連するCT上の異常所見である可能性が高い.
第47回日本痛風・核酸代謝学会記録
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