痛風と核酸代謝
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原著 2
腹部超音波検査で診断された痛風腎症例の特徴とABCG2遺伝子変異
西川 元市田 公美大野 岩男細谷 龍男横尾 隆
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2014 年 38 巻 2 号 p. 117-128

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抄録

19世紀ごろに痛風患者に腎不全が合併することが知られるようになった.それ以降,高尿酸血症が腎機能を悪化させるかどうかは長年にわたって議論されてきた.1990年ごろになると超音波検査によって痛風腎の診断が行われるようになり,正常腎では,腎髄質は腎皮質より低いエコーレベルを呈するが,痛風腎では,逆に腎髄質が皮質よりも高いエコーレベルに描出されることが多く,腎髄質高輝度エコー像(hyperechoic medulla)と呼ばれている.今回われわれは,痛風・高尿酸血症患者のうち,腹部超音波断層検査で痛風腎と診断された症例の臨床的特徴を明らかにすることを目的として,当院通院中の痛風患者で腹部超音波断層検査にて,hyperechoic medullaの所見を有する痛風腎群10例と,所見のない非痛風腎群10例について治療前後の血清尿酸値や腎機能の変化などを観察し,さらに近年痛風発症の原因遺伝子とされるABCG2遺伝子の変異について検討した.非痛風腎群では酸性尿を呈する症例は認めなかったが,痛風腎群では酸性尿を示した症例が10例中9例と有意に酸性尿を示していた.また治療開始5年後では非痛風腎群の腎機能は悪化を認めなかったが,痛風腎群では血清クレアチニン値の上昇および推定糸球体濾過量の低下を有意に認めた.ABCG2遺伝子の変異の頻度については両群間に有意な差は認めなかった.

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© 2014 一般社団法人 日本痛風・核酸代謝学会
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