痛風と核酸代謝
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原著 5
腎症合併高血圧においてシルニジピンが血清尿酸値を減少させる要件
斉田 光彦
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2018 年 42 巻 1 号 p. 41-50

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抄録

背景:高血圧や慢性腎臓病(CKD)ではレニン・アンジオテンシン(RA)系及び交感神経系の活性化によりナトリウム(Na)と尿酸の尿中排泄が減少することから,高尿酸血症を合併していることが多い.降圧薬として用いられるシルニジピン(CIL)は他のカルシウム拮抗薬(CCB)と異なり,交感神経系に抑制的に働く事や尿酸生成を阻害する事などが報告されているが,これまで高血圧性腎症を対象にCILによる血清尿酸値(SUA)低下の作用機序についてRA系や交感神経活性(SNA)との関連から調べた研究は少ない.

方法:高血圧未治療或いはAT1受容体遮断薬(ARB:ロサルタン以外)服用後も降圧不十分で高尿酸血症を伴う当院CKD患者83名に対して,アムロジピン(AML)又はCILを1年間投与した時の血圧,脈拍,SUA,尿中蛋白/ クレアチニン(Cr)比,尿中尿酸(UA)/Cr比,及び推算糸球体濾過量(eGFR)の推移を後向きに検討した.また,尿中UA/Cr<0.4を尿酸排泄低下型,早朝脈拍数(MPR)≧70beats/min(bpm)や尿中ノルエピネフリン濃度(UNE)≧160μg/dayをSNA亢進と判定した.

結果:データは中央値で表す.CCB開始1年後,単独投与群では同等の降圧と尿蛋白減少(AML 156/88→133/81, CIL 158/85→136/77mmHg; AML 0.56→0.39, CIL 0.51→0.33g/gCr; 全てP<0.01)を認め,ARBとの併用群でも同様の結果となり4治療群間に差はなかったが,MPRはARB+CIL群のみ有意な減少を示し,他の3治療群では不変であった.両CCBの単独群及びARB併用群においては,どちらも基礎値からのSUA増加例の割合はAML 使用群がCIL使用群より多く,逆にSUA減少例の比率はAML使用群に比べCIL使用群で高率となった.CILのSUA減少作用は単独投与よりもARB併用の方が強力であり(CIL単独7.43→7.22mg/dL, p<0.05; ARB+CIL 7.41→6.91mg/dL, p<0.01),全CIL服用群でMPR≧70bpmや尿中UA/Cr≧0.4の例はそれ以外の例と比べてSUA減少度が大きかった.ARB+CIL群のうちeGFR≧60mL/min/1.73m2 かつUNE≧160μg/day例ではSUA減少が最も顕著となり(7.39→6.27mg/dL, p<0.01),特に尿中UA/Cr<0.4の病型においては作用が更に増強され,畜尿例でも腎機能補正後の尿中尿酸排泄率が有意に上昇していた.

結論:腎症合併高血圧においてCILは通常尿酸生成阻害性及び混合性機序により降圧度や尿蛋白減少度とは独立したSUA低下作用を示すが,腎機能温存かつ交感神経亢進の状態では尿酸排泄促進機序が追加されてSUA減少効果を増幅することが示唆された.

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© 2018 一般社団法人 日本痛風・核酸代謝学会
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