プリン・ピリミジン代謝
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正常人の筋運動に伴う循環赤血球の解糖系の変動- 筋プリン体異化亢進の関与
清水 孝郎河野 典夫西村 隆通大野 昭王 燕玲清川 裕朗川知 雅典山田 祐也桑島 正道垂井 清一郎
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1989 年 13 巻 1 号 p. 24-28

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抄録
正常人では激しい運動に伴い赤血球解糖系が変動するが,その機構についてはこれまで明確でなかった.今回,私どもは,激しい運動に伴う筋アデニンヌクレオチド(AN) の異化亢進が, 赤血球解糖系の変動因子の一つであることを明らかにした.対象は運動非鍛練者3名.エルゴメータで200-300Wの運動を2-3分間行った.ANの分解産物であるアンモニアの血中濃度は運動直後に平均4倍に増加しており,30分後には低下した.同じくANの分解産物の血漿ヒポキサンチン,イノシンは運動直後より増加しており(20倍と4倍),30分後も持続して高値であった.血清尿酸は遅れて30分後に増加した(増分1.3mg/dl).血液pHは運動後低下し(減少分0.15),30分後に正常に復した. 運動後に赤血球内のglucose 6-Pは2倍,fructose 6-P は2倍,fructose 1,6-P2は9倍,dihydroxyacetone-P + glyceraldehyde3-Pは9倍に増加した.以上,正常人において激しい運動を行えば,筋アデニンヌクレオチドの分解が亢進する.その結果,血中に増加したイノシンが赤血球に取り込まれ,これを代謝して赤血球上位解糖中間体が増加する.このようなプリンヌクレオシドを基質とする循環赤血球の解糖代謝は運動に伴う赤血球2,3-bisphosphoglycerateの増加機構として重要と思われる.
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© 一般社団法人 日本痛風・核酸代謝学会
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