痛風と尿酸・核酸
Online ISSN : 2435-0095
原著 4
フェノフィブラートによる腎機能障害の後方視的検討
大山 博司大山 恵子諸見里 仁田淵 大貴藤森 新
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2021 年 45 巻 1 号 p. 49-59

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抄録

フェノフィブラート(FEN)は脂質異常改善薬であるが尿酸降下作用も有することから,メタボリックシンドロームの合併が多い痛風・高尿酸血症の患者に使用する機会が多い.フィブラート系薬物を使用中に血清クレアチニンが上昇することを経験するが,その実態は明らかでない.年間3,000例の痛風・高尿酸血症の診療に携わっている我々の施設でFENが投与されている患者を対象にFEN投与による腎機能障害を中心に,血清脂質改善作用と尿酸降下作用などを検討した.

わが国で,FENの錠剤(トライコア錠,リピディル錠)が発売された2011年12月から2020年8月までに,当院においてFENが投与された患者159例の血清トリグリセリド(TG)と血清尿酸値(SUA)はFEN投与1-3か月後には有意に低下していた.腎機能(血清クレアチニン:SCR,推算糸球体濾過量:eGFR)については,SCRはFEN投与前の0.83±0.15mg/dLから投与1-3か月後に0.97±0.20mg/dL,6か月後には0.99±0.18mg/dLと有意に上昇し,eGFRは81.2±18.8mL/min/1.73m2から1-3か月後に69.2±14.7mL/min/1.73m2,6か月後に66.7±14.5mL/min/1.73m2と有意に低下していた.FEN投与によるSCRの上昇とeGFRの低下は,投与患者の90%以上に認められ,約70%の患者ではSCR1.0mg/dL以上の上昇とeGFR10mL/min/1.73m2以上の低下が認められた.6か月以降は同程度の腎機能で推移していた.この間に何らかの事情でFENの投与が中止されたが,その後も当院の通院を継続している21例の患者を対象に,投与中止2-4か月後の腎機能を検討すると,投与期間の長短にかかわらず,投与中止直前と比較してSCRは1.16±0.29mg/dLから0.96±0.22mg/dLに低下し,eGFRは59.7±19.6mL/min/1.73m2から71.0±19.8mL/min/1.73m2に有意に増加して,それぞれ投与前のレベルに復していた.FENによる腎機能低下機序は明確にされていないが,プロスタグランディンの産生抑制に起因した可逆的な腎血流量の低下が推定されている.

FENによる腎機能障害は市販後調査等で報告されているSCR上昇(0.99-3.03%)に比べてかなり高頻度であることが判明したが,FENは脂質異常症や高尿酸血症の改善に加えて,糖尿病性腎症や網膜症の進展抑制,血管内皮機能改善,心血管イベント抑制など種々の臨床的有用性が示されている薬物であり,FEN投与に当たっては益と害のバランスを考慮し,投与中は定期的に腎機能検査を行うことが重要と考えられた.

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© 2021 一般社団法人日本痛風・尿酸核酸学会
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