2025 年 49 巻 1 号 p. 47-53
フェブキソスタット40mgで血清尿酸値6.0mg以下を達成できていない高尿酸血症・痛風の男性患者を対象に,フェブキソスタット20mg追加投与40例とドチヌラド0.5mg併用投与23例とで血清尿酸値低下率と治療目標達成率を比較した.フェブキソスタット20mg追加群では血清尿酸値は6.6±0.6mg/dLから5.3±0.7mg/dLに有意に低下し,低下率19.8±9.7%で,血清尿酸値6.0mg/dL以下の達成率は90.0%であった.一方,ドチヌラド0.5mg併用群では血清尿酸値は6.9±0.6mg/dLから5.4±0.8mg/dLに低下し,低下率は21.2±13.8%で,血清尿酸値6.0mg/dL以下の達成率は78.3%で,両群で治療効果に有意差は認められなかった.フェブキソスタット60mgで治療目標値を達成できていない6例についても,フェブキソスタットを40mgに減量してドチヌラド0.5mgを追加投与した場合に,血清尿酸値は6.4±0.3mg/dLから5.2±0.7mg/dLに有意に低下し,低下率は19.6±10.8%で,血清尿酸値6.0mg/dL以下の達成率は100%であった.フェブキソスタット40mgへのフェブキソスタット20mg追加投与とドチヌラド0.5mg併用投与による治療効果は病型の違いによる影響を受けなかった.単独投与の場合,血清尿酸値低下率はフェブキソスタット10mgがドチヌラド0.5mgと同等で約20%であるが,フェブキソスタット40mgに追加投与した場合には 血清尿酸値の低下率は2倍量のフェブキソスタット20mgがドチヌラド0.5mgと同等であった.フェブキソスタット20mgと40mg投与群で薬効である血清尿酸値の低下率をフェブキソスタット10mg投与群と比較すると投与量は2倍,4倍と増加しているが血清尿酸値の低下率は1.4倍,1.8倍の増加にとどまっており,フェブキソスタット40mgにフェブキソスタット20mgを追加した場合の血清尿酸値低下率の減弱は同一薬物の増量に伴う現象と推察された.フェブキソスタット40mgへの作用機序の異なるドチヌラド0.5mgの併用投与は高尿酸血症・痛風の治療において有用な方法であると考えられた.
For male patients with hyperuricemia and gout who were unable to achieve a serum uric acid level of 6.0 mg or less with febuxostat 40 mg, we compared the serum uric acid level reduction rate and treatment goal achievement rate of a serum uric acid level 6.0 mg/dL or less between 40 patients who received an additional dose of febuxostat 20 mg and 23 who received dotinurad 0.5 mg in combination. In the febuxostat 20 mg addition group, serum uric acid levels significantly decreased from 6.6 ± 0.6 mg/dL to 5.3 ± 0.7 mg/dL, with a reduction rate of 19.8 ± 9.7%, and an achievement rate of 90.0%. On the other hand, in the dotinurad 0.5 mg combination group, the serum uric acid level decreased from 6.9 ± 0.6 mg/dL to 5.4 ± 0.8 mg/dL, with a reduction rate of 21.2 ± 13.8%, and an achievement rate of 78.3%, with no significant difference in treatment effects between the two groups. In the 6 patients who did not achieve the therapeutic target values with febuxostat 60 mg, when febuxostat was reduced to 40 mg and dotinurad 0.5 mg was co-administered, the serum uric acid level decreased significantly from 6.4 ± 0.3 mg/dL to 5.2 ± 0.7 mg/dL, with a reduction rate of 19.6 ± 10.8%, and an achievement rate of 100%. The therapeutic effects of febuxostat 20 mg added to febuxostat 40 mg and combined with dotinurad 0.5 mg were not affected by the type of hyperuricemia. When administered alone, febuxostat 10 mg reduced the serum uric acid level by approximately 20%, equivalent to dotinurad 0.5 mg; however, when administered in addition to 40 mg of febuxostat, twice the dose of 20 mg would have been required to achieve the same effect as 0.5 mg of dotinurad. Comparing the rates of reduction in serum uric acid levels in the febuxostat 20 mg and 40 mg groups with the febuxostat 10 mg group, the dose increased by 2 and 4 times respectively, but the rate of decrease in serum uric acid levels remained at a 1.4 and 1.8 times increase, suggesting that the attenuation in the rate of decrease in serum uric acid levels when febuxostat 20 mg was added to febuxostat 40 mg was a phenomenon associated with increasing the dose of the same drug. The combined administration of 40 mg of febuxostat and 0.5 mg of dotinurad, which has a different uric acid lowering mechanism, was considered to be a useful method for the treatment of hyperuricemia and gout.
痛風の根本治療は関節をはじめとする体組織への尿酸塩沈着を解消し,痛風関節炎や腎障害などの尿酸塩沈着症状を回避することである.尿酸塩結晶を体組織から消失させるためには尿酸の体液中での溶解限界と考えられる6.4mg/dLよりも低い6.0mg/dL以下に血清尿酸値を維持することが重要である1).尿酸生成抑制薬のフェブキソスタットは最小量の10mgで治療を開始し,薬用量を漸増することで多くの症例は20~40mgで血清尿酸値6.0mg/dL以下を達成することができるが2),中にはフェブキソスタットの極量である60mgを投与しても治療目標値を達成できないケースも存在する.当院ではこのような場合尿酸排泄促進薬を併用するが,血清尿酸値が下がり過ぎてフェブキソスタットを減量することを経験しているため,フェブキソスタット40mg投与時点で選択的尿酸再吸収阻害薬のドチヌラド0.5mgを併用することが少なくない.フェブキソスタット40mg投与時点で治療目標値を達成できていない場合のドチヌラド0.5mg併用投与の有用性について報告する.
1, ドチヌラド0.5mg併用投与の有用性の検討
2017年10月から2024年9月までの7年間に,フェブキソスタット40mgにフェブキソスタット20mgが追加投与された男性痛風患者40例と,フェブキソスタット40mgにドチヌラド0.5mgを併用投与した高尿酸血症・痛風の男性患者23例(痛風22例)とで血清尿酸値の低下率並びに血清尿酸値6.0mg/dL以下の達成率について検討した.また,フェブキソスタット60mg投与で血清尿酸値6.0mg/dL以下を達成できていない男性痛風患者6例について,フェブキソスタットを40mgに減量してドチヌラド0.5mgを併用投与した場合の血清尿酸値の変化についても検討した.さらに,フェブキソスタット40mgへのフェブキソスタット20mg追加投与とドチヌラド0.5mg併用投与による血清尿酸値低下率が,病型によって影響を受けるかについて,対象を尿酸排泄低下型,腎負荷型,混合型の3群に分類して,それぞれの血清尿酸値低下率についても検討した.
2, フェブキソスタット投与量の増量に伴う血清尿酸値低下率の検討
2019年4月から2024年3月までの5年間にフェブキソスタットが投与された高尿酸血症・痛風の男性患者397例(49.3±12.4歳,痛風389例,BMI25.4±3.5 kg/m2,eGFR73.2±15.9 mL/min/1.73m2)を対象として3),フェブキソスタット容量別の血清尿酸値低下率を検討した.
数値は平均値±標準偏差で表し,統計処理は尿酸降下薬追加投与前後の血清尿酸値の変化率についてはpaired t検定で,病型間の数値の比較は多重比較検定(Bonferroni/Dunn)で,目標達成率の比較はχ2検定などで行い,p<0.05で有意差ありとした.本研究は後方視的であるが医療法人つばさ倫理委員会の承認(承認番号10074)を得て,ヘルシンキ宣言に則って行われた.
1-1, ドチヌラド0.5mg併用投与の有用性の検討
フェブキソスタット20mg追加群では血清尿酸値は6.6±0.6mg/dLから5.3±0.7mg/dLに有意に低下し,低下率19.8±9.7%で,血清尿酸値6.0mg/dL以下の達成は36例(90.0%)に認められた(表1).一方,ドチヌラド0.5mg併用群では血清尿酸値は6.9±0.6mg/dLから5.4±0.8mg/dLに低下し,低下率は21.2±13.8%で,血清尿酸値6.0mg/dL以下の達成は18例(78.3%)であった(表1).ドチヌラド0.5mg併用群での血清尿酸値の低下率はフェブキソスタット20mg追加群の低下率より若干高率であったが有意な違いではなく,血清尿酸値6.0mg/dL以下の達成率においても両群で有意差は認めなかった(表1).フェブキソスタット60mg投与をフェブキソスタット40mgに減量してドチヌラド0.5mgを併用した群においても血清尿酸値は6.4±0.3mg/dLから5.2±0.7mg/dLに有意に低下し,低下率は19.6±10.8%で,血清尿酸値6.0mg/dL以下の達成率は100%であった(表1).
1-2, 病型の違いによる治療効果の比較
フェブキソスタット40mgにフェブキソスタット20mgを追加投与した治療群では尿酸排泄低下型において血清尿酸値は6.8±0.6mg/dLから5.5±0.7mg/dLに有意に低下し,低下率は17.9±10.6%で腎負荷型の23.4±8.0%並びに混合型の低下率21.1±7.9%と比較して低率ではあったが,有意な違いではなかった(表2).フェブキソスタット40mgにドチヌラド0.5mgを併用投与した場合でも尿酸排泄低下型では低下率21.9±14.3%で腎負荷型と混合型と比較して有意な違いはみられなかった(表3).
2, フェブキソスタット投与量の増量に伴う血清尿酸値低下率の検討
血清尿酸値6.0mg/dL以下を目標にフェブキソスタットを10mgから20mg,40mg,60mgと増量した場合,血清尿酸値は治療前の8.7±1.2mg/dLからそれぞれ6.8±1.1mg/dL,6.1±1.0mg/dL,5.5±0.9mg/dL,5.4±0.9mg/dLと投与量に従って有意に低下した(図1).しかし,血清尿酸値の低下率はそれぞれ,22.1±8.9%,30.4±9.7%,39.8±9.6%,45.0±11.2%で,フェブキソスタットを20mg,40mg,60mgと2倍,4倍,6倍に増量しても低下率は1.4倍,1.8倍,2.0倍増加するにとどまっていた(図1).
フェブキソスタットを40mg投与しても血清尿酸値6.0mg/dL以下を達成できない場合にドチヌラド0.5mgを併用投与することで血清尿酸値は有意に低下し治療目標値達成率もフェブキソスタット極量投与に比べて遜色ないことが確認できた.血清尿酸値低下率は単独投与の場合,ドチヌラド0.5mgとフェブキソスタット10mgはいずれも約20%で同等であることを,後方視的検討ではあるが当院通院中の患者200例以上の臨床経験に基づいて報告した3).しかし,今回の検討のようにすでにフェブキソスタット40mgが投与されている患者においては,尿酸降下機序の異なるドチヌラド0.5mgを追加投与した場合は単独投与の場合と同等の血清尿酸値低下率が観察されたが,同一薬物であるフェブキソスタットの追加投与では同じ20%の低下に単独投与の倍量である20mgの追加投与が必要であったことになる(表1).この違いは病型の違いによっては説明されないことが確認されたことから(表2),別の機序で考える必要がある.同一薬物を増量した場合に薬効は薬用量に比例して増加しないことが一般的である.脂質異常症治療薬であるスタチンの場合は薬用量を倍増してもLDL-コレステロールの低下率は平均6%程度であり,このことは6%ルールとして知られている4).フェブキソスタットの場合も開発当時の検討で,フェブキソスタット20mg,40mg,60mg投与時の血清尿酸値の低下率はそれぞれ29.6%,40.6%,48.4%で,フェブキソスタット増量においても薬用量の増量は薬効に比例しないことが報告されている5).今回の検討においてもフェブキソスタット増量に伴って薬効である血清尿酸値の低下率は減弱することが確認された(図1).
欧米ではフェブキソスタット40mg錠や80mg錠が発売されており6,7),フェブキソスタットの使用量が我が国より多くフェブキソスタット単剤でも血清尿酸値の治療目標値を達成することは可能と思われるが,我が国においてはフェブキソスタットの最大使用量が60mgに限定されているためフェブキソスタット40mgの投与時点でドチヌラド0.5mgを併用投与することは考慮しても良い治療法と考えられる.事実フェブキソスタット60mgでも治療目標値を達成できないケースに対してフェブキソスタットを40mgに減量してからドチヌラド0.5mgを追加投与しても良好な血清尿酸値の低下が確認された(表1).
混合型の痛風患者を対象として,フェブキソスタット20mgの単独投与では治療目標を達成できない患者に対してフェブキソスタット20mgを追加投与する場合と,尿酸排泄促進薬のベンズブロマロン25mgを併用投与した場合の治療効果を比較した前向き研究がXueらによって報告されている8).フェブキソスタット20mg追加群の目標達成率が47.7%であったのに比べてベンズブロマロン25mgの併用投与ではより高い75.5%の達成率が認められ,混合型の場合尿酸生成抑制薬と尿酸排泄促進薬の併用療法は有用であるとされている8).今回の検討結果から考察するとベンズブロマロン併用がフェブキソスタット単独治療より優れた治療効果を発揮したのは病型が関与したというよりは作用機序の異なる尿酸降下薬を併用したことの関与が大きいと考えられる.さらに,ベンズブロマロン25mgはドチヌラド1mgと同等の尿酸降下作用を発揮すると考えられることから2),フェブキソスタット単独治療に勝る結果が得られたことは当然の帰結であると思われる.我々の今回の検討結果は1施設での少数例を対象とした後方視的検討であり,尿酸生成抑制薬と尿酸排泄促進薬の併用療法の有用性については症例数を増やした多施設共同で行う前向き検討によって実証する必要があると考えられた.
本論文発表内容に関連して特に申告なし.