日本草地学会誌
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牧草の再生に関する生理生態学的研究 : 第7報エンバク(Avena sativa L.)の節間伸長期における再生の様相
江原 薫池田 一前野 休明
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1967 年 13 巻 3 号 p. 189-194

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抄録

牧草の節間伸長期における再生の様相を明らかにする目的で,エンバクを用いて検討した。試験区は,厚播き区と薄播き区の2区で,厚播き区は一箱(645cm^2)あたり100個体,薄播き区には15個体を育てて比較した。発育の程度は厚播き区で若干促進された。刈取りは,3月9日に地上5cmのところで行なった。その時各茎の生長点は,厚播き区で72%,薄播き区で16.2%が刈取られた。刈取り後の再生長は,刈取り時における既存分けつからの再生長と,刈取り時には休眠状態で伸長していなかった新生分けつの生長との2種類に大別して調査した。既存分けつよりの再生長は,刈取り後9日目まで暗黒条件下で再生させて調査したところ,薄播き区で一箱あたり約30本が再生したが,厚播き区では認められなかった。新生分けつによる再生は,刈取り後初期には厚播き区で薄播き区より多くの新分けつの出現をみたが,あとになって出現は停滞し,全分けつ数も減少した。一方薄播き区では刈取り後44日目まで増加した。刈取り後44日目における新生分けつの発生数と生長量とは,厚播き区で一箱あたり32.0本,乾物重で4.6gであり,薄播き区ではそれぞれ45.7本,9.5gであった。株および根に含有されるTAC量は,刈取り後相当部分が呼吸に用いられたが,TAC量の多少は再生を大きく左右しているように思われた。すなわち,TAC量の少ない厚播き区では,刈取り後既存分けつよりの再生長は認められず,また,新しく出現した分けつも貯蔵養分の減少から途中で枯死し,薄播き区より少ない再生量を示した。一般に,再生の良否は,形態的には分けつの態勢によって,また,生理的には株・根の貯蔵養分の多少によって影響されるものと思われる。本実験における厚播き区と薄播き区とでは分けつの態勢からも,また,貯蔵養分の面からも厚播き区の方が薄播き区に劣っており,再生量に差を生じたものと考えられる。

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© 1967 著者
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