日本草地学会誌
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Pseudomonas striafaciens (ELLIOTT) STARR et BURKHOLDERによるエンバクのすじ(条)枯細菌病
富永 時任西山 幸司
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1968 年 14 巻 1 号 p. 51-55

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抄録
1967年,福山市でエンバクの葉に条斑を作る病害が発生した。葉では初め半透明,楕円形の小病斑ができ,さらに葉脈に沿って縦に伸び,長さ20cmにも達する半透明,褐色の条斑となる。葉鞘にも葉と似た病斑ができる。発病株は下葉からしだいに枯れ上がるが,発病が激しいと生長点が侵され枯死する。3月上旬から発生し,5月中旬には終息する。品種ドイッ黒が激しく侵されたが,隣接のホワイトターターはやや発病少なく,北支那は全く発病しなかった。分離細菌をエンバクかさ枯病菌P. coronafaciens,イタリアンライグラスかさ枯病菌P. coronafaciens var. atropurpurea と寄生性および細菌学的性質を比較した。前二者はエンバクだけを侵したが,後者は多数のイネ科植物を侵した。エンバク上の病斑は本分離細菌は条斑であるが,エンバクかさ枯病菌はかさのある楕円形大形病斑,イタリアンライグラスかさ枯病菌はかさのない小病斑である。前二者の細菌学的性質はよく似ており,その差異は緑色螢光色素,普通寒天培地上での褐色色素の産生の有無のみである。これらは系統間の差異と考えられるので,両者の性質はほとんど変わりがないといえる。以上の寄生性,病徴およびP. coronafaciensに似た細菌学的性質から,分離細菌をP. striafaciens (Elliott) Starr et Burkholderと同定する。本病はわが国未記録病害なのですじ(条)枯細菌病と命名する。
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© 1968 著者
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