日本草地学会誌
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放牧草地のエネルギー効率 : 第3報 ミヤコザサ群落の物質生産
秋山 侃大久保 忠旦高橋 繁男
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1977 年 23 巻 1 号 p. 43-51

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抄録

福島種畜牧場芝原分場内の放牧草地に隣接したミヤコザサ群落の物質生産を,1975年と1976年に測定し,以下のような結果を得た。1.地上部重は両年とも6月に最大値(745g,883g/m^2)に達したのち,ゆるやかに低下する。地下部重は6-7月に最低となる(749g,8429g/m^2)が,その後回復し,10月に1139g,1165g/m^2に達した。この結果,全植物体重は1975年は1228-1828g/m^2,1976年は1651-1953g/m^2の範囲にあった(表1)。2.全植物体乾物重増加速度(平均CGR)は春と秋に高く,12-15g/m^2/dayに達したが,これは春は地上部,秋は地下部重の急激な増大によってもたらされたものである(図1,表2)。3.葉面積は春先は少なく,7月に最大LAI 5-6になり,そののち秋までに半減する(表4)。4.当年葉は5月末から7月にかけて展開し,越年葉はこの頃急速に脱落する。これに対して当年稈は6月上旬までにほとんど伸長しつくし,越年稈はその後徐々に枯死していく(表5)。5.ミヤコザサ群落のT/R比は極めて小さく,地上部が最も繁茂する7月でさえ1にしかならない。これは根菜類のT/R比に匹敵する値である(表7)。6.以上の結果,その生活形や貯蔵養分の量から考えて,ミヤコザサは放牧利用に耐えうる草種であると思われるが,適正に利用するためにはさらに生態的研究を行なう必要があろう。

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© 1977 著者
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