日本草地学会誌
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放牧草地のエネルギー効率 : 第4報 ミヤコザサにおける窒素と熱量の動態
秋山 侃大久保 忠旦高橋 繁男
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1977 年 23 巻 1 号 p. 52-59

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抄録
前報の試料を用いて,ミヤコザサの窒素の動態と熱量値の季節的推移を調べ,次の結果を得た。1.全植物体の平均窒素含有率は年間を通じて0.5-0.7%であり,地下部より地上部が高い。部位別には葉が高く,展葉直後には2%をこえているが,冬までに1%強になり,越年後もほとんど変らない。リターと地上部立枯がこれに続き高い窒素含有率を保持する。地下部生体は春と秋にやや高く,地上部重が最大になる夏季に0.4%以下に低下する。稈は伸長直後は1%以上あるが直ちに低下し8月以降は0.3%付近となる。2.全植物体の窒素現存量は6月と9-10月にピークを生じ,それぞれ11.27g,11.09-11.73g/m^2となる。このうち6月のピークは地上部の増大,9-10月のピークは地下部の充実によってもたらされたものである。部位別窒素現存量の変動は植物体内における窒素の移動・転流によってもたらされた部分もかなりあると考えられる。そのため,春先と秋には窒素現存量の60%以上が地下部に,夏季には2/3以上が地上部に集中している。3.全植物体の乾物当り平均燃焼熱は年間を通じて4340-4590cal/gの範囲にあった。部位別にみると地上部より地下部の燃焼熱が高い。地上部では当年葉が最も高く,稈,前年葉,地上部立枯,リターの順であった。稈は当年生と前年生でほとんど差がなかった。4.熱量現存量は年間を通じ7200-8500kcal/m^2であった。部立間の季節的移動があるため,春先と晩秋には全植物体の熱量現存量の約7割が地下部に集中しているが,夏季には約半分の熱量が地上部に存在している。5.一般的に活動の中心となっている若い器官や部位の窒素含有独,乾物当り燃焼熱は高いが,老化に伴ないいずれも低下する。6.地下部と地上部がそれぞれ占める割合を乾物現存量の場合と比較すると,窒素現存量は地上部の占める割合が大きく,熱量現存量は地下部の占める割合が大であったが,季節的推移のパターンとしては乾物現存量の場合と類似していた。
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© 1977 著者
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