日本草地学会誌
Online ISSN : 2188-6555
Print ISSN : 0447-5933
ISSN-L : 0447-5933
異なる気温下におけるイタリアンライグラスの生育,体内成分の品種間差異
田村 良文西村 修一星野 正生
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

1977 年 23 巻 3 号 p. 201-209

詳細
抄録
早晩性,倍数性,耐雪性の異なるイタリアンライグラス5品種,3系統を供試し,秋季自然条件下と,自然光利用のファイトトロン内における15℃,20℃,25℃の計4温度条件下における生長反応の品種間差異を検討した。また倍数性,耐雪性の差に起因する生長反応の差についても検討を加えた。1)自然条件下で平均気温が8℃前後に低下した処理後20〜30日目に,主稈葉数4〜6のイタリアンライグラスは品種により異なった2種類の生育反応を示した。処理後10〜20日目に比較しNARが急激に低下しRLGRが増加するタイプと,NARが若干増加しRLGRが低下するタイプであるが,この結果としてのRGRは後者で高い値を示した。本実験では前者に早生種が,後者に晩生種が相当した。2)ファイトトロン内では,RGRとNARとが有意に高い相関を示し,低温,あるいは高温条件下で純同化率の低下しにくい特性を有する品種ほど,低温生長性,あるいは耐暑性が高いものと推察された。3)茎の乾物率,WSC%,T-N%の品種間変異は低温条件下ほど大きく,かつこれらの値相互間の相関も低温条件では高かったが,生育の適温,および高温条件では相関はほとんど認められなかった。4)2nと4nのSLAが等しい場合には,2nは4nに比較して高いNARを,また低温条件下において茎の乾物率が等しい場合には,4nは2nに比較して高い茎のWSC%と,低いT-N%を示すことが認められた。5)20℃,25℃における30日目の茎の乾物率は,2nに比較して4nで明らかに低い値を示したが,自然条件および15℃では明確な差は認められなかった。6)耐雪性強の品種は2n,4nを問わず,相対的に高い純同化率を有し,[形態的には葉が厚く,葉重/茎重比が小さい。また,体内成分について見れば,低温条件下で茎の乾物率,WSC%が高く,T-N%の低い特性をもつ事が認められた。7)比較的低温条件のもとにおける5〜6葉期の幼植物の茎の乾物率,あるいはWSC%を指標とした耐雪性判定の可能性が示唆された。
著者関連情報
© 1977 著者
前の記事 次の記事
feedback
Top