抄録
1.気温と日射量以外の要因を同一と仮定した場合の平均CGRを気象生産力とし,緯度別に選んだ3地域の立地条件(海抜,地形)別の気象生産力をオーチャードグラス草地について比較した。2.生産期間(5℃以上の月)中の平均気象生産力が最大値を示す海抜高度は低緯度地になるほど高まる傾向を示し,その地点の生産期間は7〜8ヶ月,温量指数は65〜80であることが示された。この値は,わが国におけるオーチャードグラス草地の生産適地判定のための1つの指標になるものと考えられる。3.平均気象生産力は,斜面の方位と角度とによって異り,一般に東西斜面に比べ北斜面では低く,南斜面では高い値を示した。また南斜面では,傾斜20°まで生産力は高まる傾向を示すのに対し,北斜面では傾斜度が増すほど低下し,東西斜面では傾斜度による差がほとんどみられなかった。4.季節生産性は,低緯度地から高緯度地に,低海抜地から高海抜地になるにつれて二頂曲線型から単頂曲線型へと変化する傾向を示した。また斜面の方位と角度とによっても異り,北斜面から南斜面になるにつれて秋季の生産力が高まる傾向を示した。この傾向は,傾斜角度が増大するほど顕著になった。