抄録
1973年春,北海道根室管内中標津町計根別を中心に多発した草地の冬枯れについて,49戸の農家から被害の大および小の草地をえらび実態調査をおこなった。データの解析には数量化第I類をもちい,外的基準Yを冬枯れ被害面積率にとり,要因項目X_iとして被害草種,微地形,積雪深,年間利用回数,最終利用時期,施肥量,土壌中有効成分などをとり,X_iによってYを説明し,被害の多少を左右する要因を明らかにしようとした。結果は,次のとおりであった。1.解析の精度は,重相関係数で最高0.866が得られ,ある程度の成功をおさめた。2。被害面積率に関与する要因は,第1に,被害草種および被害地微地形があげられ,オーチャードグラス,ラジノクローバおよびチモシーが被害を受けた場合,その程度が甚大であった。また,滞水などの水分条件が被害と密接に関係したと思われ,凹地にとどまらず凸地や傾斜地で被害を受けた場合にその程度が著しかった。3.第2には,土壌pH,土壌K,土壌Ca,土壌MgおよびP-K施肥量があげられた。草地の造成後の年数や秋の最終利用時期などは関係が少なかった。したがって,今回の冬枯れは従来の雪腐大粒菌核病とは異なったタイプのものであり,その実証的研究においては,草種,水分条件,塩基成分を中心とした施肥条件,および土壌pHなどを重視する必要がある。