日本草地学会誌
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クズの群落構造に関する研究 : V.維管束環数の異なる越年茎の茎長割合ならびに越年茎の発根節数と非発根節数の割合
津川 兵衛佳山 良正
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1980 年 26 巻 3 号 p. 285-289

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抄録
クズの群落構造を解明するための研究の一環として,1973年1月上旬から3月上旬にかけて,六甲山系南麓に位置する神戸市東灘区本山町北畑にあるクズ群落の200m^2区画内がらクズの越年茎を採取し,維管束環数の異なる越年茎の茎長割合ならびに越年茎の発根節数と非発根節数の割合を調べ,次のような結果を得た。本研究に用いた200m^2内の全越年茎の延べ茎長は149,542.5cmで,これらの越年茎は1環から7環までの茎からなっていた。1環から7環までの越年茎の茎長割合はそれぞれ48.33,37.03,11.72,2.14,0.69,0.03および0.06%であり,それらの越年茎の1m^2当りの茎長はそれぞれ361.4,276.9,87.7,16.0,5.2,0.2および0.4cmであった。3環以上の越年茎の茎長割合が特に小さいのは茎の生理的な老朽化,コウモリガ類の幼虫等による茎の食害および赤渋病や腐敗病等の病害によってそれらの茎が特に枯死しやすくなるためであると考えられる。全節数に対する発根節数の割合は1環の越年茎では7.12%と小さいが,茎の維管束環数の増加にともない次第に増大し,4環の越年茎では54.82%と最大に達した。また,発根節保有数では2環の越年茎が1,511個と最多で,第2位は3環の越年茎で806個,第3位は1環の越年茎で593個であることから,茎は古くなれば草冠の下方に沈み込むため接地する機会が増し,節根が発生しやすくなると思われる。1環の越年茎の発根節にはR-IまたはR-IIの根群をもつものがあり,2環の越年茎の発根節にはR-IないしR-IIIの根群をもつものが,3環から5環までの越年茎の発根節にはR-IないしR-IVの根群をもつものがあった。
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© 1980 著者
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